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澱の中の二人 1-13

 着替えと洗顔を終えた伊織は、また元のような無表情に戻っていた。

 白のパーカーに黒いジーンズという服装は、清楚というよりは地味な印象である。しかし、ゆったりめの上着でも隠しきれない胸の膨らみや、まだ余韻の抜けきれない胡乱な瞳、うっすらと朱の差した頬など、地味でありながらも妖艶な色香を併せ持っているせいで、全体としてのバランスは酷く奇妙で歪んたものに感じられるのだった。

「次はいつ来れる?」

 帰り際、俺は玄関に向かう伊織を呼び止め、後ろからそっと抱き寄せた。甘ったるい体臭が鼻腔をくすぐる。柔らかな肢体は未だ微熱を帯びていて、俺の体に心地良い温もりを伝えてくる。

「土曜日はどうだ? 一日中可愛がってやるぞ」

 耳元で囁くように言いながら、俺は撓んだ一対の膨らみをまさぐり、固く尖ったしこりに指を這わした。ピンと上を向いた乳首は、パーカーの布越しでも視認できるほどに勃起している。それを布ごと摘み上げ、やや乱暴にコリコリと押し潰してやると、伊織は途端に膝を震わせ、その場に崩れ落ちそうになる。

「あっ……ふぁっ、ん……」
「適当に言い訳でもして、朝から来い。いいな?」

 伊織が小さく頷くのを確認してから、俺は胸の尖りから手を離す。
 そして、肩越しに覗き込むようにして、惚けた少女の口唇を奪った。

「んむっ、ちゅ、んっ……ちゅぱ、んちゅ……」

 伊織は抵抗するどころか、キスをせがむように顔を傾け、俺に身を委ねている。ねじ込まれる舌にも自分から吸いつき、己の舌を絡ませ、心なしか興奮した様子で吐息を荒らげていた。

 しばしの間、俺たちは恋人同士のように濃密なキスを交わす。
 一日にたった一度だけ、二人の時間が巻き戻る。単なる習慣、儀式のようなもので、伊織を辱めるためには全く必要のない行為だ。だが、俺は何故か、この感傷的な儀式を止めることができずにいた。自分でも理由はわからない。ただ何となく、続けなくてはいけないような気がしてならないのだ。

 口唇を離した時、伊織の表情には、ほんの一瞬だけ昔の面影がよぎったような気がした。ただの錯覚に過ぎなかったのだろう、次の瞬間、伊織の顔はいつも通りの能面で、昏く澱んだ瞳からはどんな感情も見出すことはできなかった。

 身を翻した伊織は、無言を貫いたまま俺の家を後にした。
 結局、この日俺と伊織は、一度も会話を交わすことはなかったのである。

テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

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